基本情報
【デジタル版】エコ&ピースナビゲーター6月号(vol.43) 平和編
2024.6.24
Fake Newsと平和について考えてみませんか
市田真理氏さん(公益財団法人第五福竜丸平和協会事務局長)
都立第五福竜丸展示館の仕事と並行して、非常勤で大学教員もしています。学生たちにフェイクニュースってどんなイメージ?と訊ねると、多かれ少なかれフェイクにひっかかったことがあるようで、「動画が付いていると信じちゃう」「有名人がターゲットにされやすいと思うけど、有名人が書いているとなんとなく信頼できる感じがする」という答えが返ってきました。私はむしろ、動画があると疑ってしまうタチなので、そうした回答にいささかたじろぎました。
私たちを取り巻く情報は、同じような価値観のものにばかり目に付くような仕組み、いわゆるエコーチェンバー(※)という罠が仕込まれています。自分と似た意見ばかりが目に入り、まるで自分は大多数の一部、マジョリティの側にあるかのように錯覚するのです。しかしマジョリティが正しいとは限らないのも世の常です。70年前の「ビキニ事件」では、水爆実験による放射性降下物が魚を汚染し、雨からも放射能が検出されたところから「原子マグロパニック」「放射能雨の恐怖」が続きました。水産業界は「風評」被害対策に大金を投じました。しかし深刻な放射能汚染があったことは事実です。見たくないものは見ない。目に見えないものは信じない。そんな生き方もあるかもしれませんが、せめて私は事実と向き合いたいと思っています。
※ 「エコーチェンバー」・・・ソーシャルメディアを利用する際、自分と似た興味関心をもつユーザーをフォローする結果、意見をSNSで 発信すると自分と似た意見が返ってくるという状況を、閉じた小部屋で音が反響する物理現象にたとえたものである 。
市田 真理さん
札幌市生まれ。
編集者、市民運動事務局などを経て、公益財団法人第五福竜丸平和協会事務局、2023年事務局長。
アフリカ中央部に位置する小国ルワンダで1994年に起こった民族対立によるジェノサイド(大虐殺)により、人口の10%に相当する80万人以上が犠牲になったんだよ。30年経った今、この悲劇からルワンダは民族間の融和政策により、環境保護、経済成長、教育等、多方面にわたり「アフリカの奇跡」と評される復興を遂げたんだよ。
写真提供:国際NGOワールド・ビジョン・ジャパン