<食べもの>食育政策
生活協同組合パルシステム東京食育政策
一人ひとりがつながり、いのちをはぐくみ、生きる力を高めます
食は日々の暮らしに欠かせないものであり、国の安全保障の大本と言えますが、現在日本は食料自給率(カロリーベース)が60 年前に比べると半減している中、農業を取り巻く環境は、生産者の高齢化、資材や燃料の高騰に加え、近年にない異常気象等により、厳しさを増し、課題解決は見通すことが出来ない中、国内農業は存続の危機に瀕しています。
また、輸入食料の増加をはじめとする食のグローバル化や、種子法廃止、種苗法改正、ゲノム編集技術応用食品の流通、さらにはこれらの動きに合わせて食品表示基準も改正されてきています。食料(品)が生産
(製造)から消費者に届くまでの流れが見えにくくなるばかりか、消費者の選ぶ権利も奪われ、国産原料の入手さえも困難になっていくことが懸念されています。
一方、私たちの食生活に目を向けると、食を取り巻く社会環境の変化に伴い、栄養の偏り、肥満や生活習慣病の増加、伝統的な食文化の衰退等、この十数年間で様々な課題が顕著に表れてきています。また、人口減少や高齢化の進行、都市部への一極集中化、格差社会の進行などに伴い、世代を問わず単身世帯の増加や個食化(孤食化)も進んでおり、一人ひとりが食や食生活を見つめ直すことが喫緊の課題となってきています。
国は 2000 年に新しい「食生活指針」を出し、食の大切さ、食に関する知識や技術等を身につける『食育』が重視されるようになりました。2005 年には食育基本法を制定、以降「食育推進基本計画」が策定され、国民の食生活改善のため『食育』を推進しています。これを受けて、教育現場はもとより、企業や市民団体、NPO などでもそれぞれの形で食育に取り組むところが増えています。
パルシステム東京は「“食べもの” “地球環境” “人”を大切にした“社会”をつくります」を理念に掲げ、
「食」を中心テーマのひとつとして、食に関するさまざまな取り組みを行なってきています。
パルシステム東京では 2003 年から組合員による「食育チーム」を組織し、食育出前講座、学習会、交流企画などを行ないました。食育チームの経験はその後の食育リーダー*1の活動に引き継がれました。
また、PLA*2を中心とした活動では主に組合員向けの学習会を開催し、2008 年度「100 万人の食づくり運動」、2015 年度「ほんもの実感!くらしづくりアクション」、2022 年度「もっといい明日へ 超えてく」アクションの活動へと引き継がれています。
パルシステム東京では 2009 年3月に食育政策を策定し、
①地域と家庭での食育推進
②産地交流を通した生産者との共感
③商品事業による日本型食生活の推進
④食の安全の取り組み
の 4 つの具体的な行動提起をし、政策実現のために活動をしてきました。
食育政策策定から十数年が経過し、国、東京都による「食育推進基本計画」の見直しにより、食にまつわる課題も変化しています。
また、地域の状況では相対的貧困の顕著化、若年層人口の減少の一方で、高齢者一人世帯の増加など社会問題化しつつあると捉えています。
パルシステム東京は、これからも食の安全・安心にこだわり「ともにつくり、ともに食べる」ことをめざ します。パルシステムの食育の考え方「健康で安心なくらしと協同の地域社会をめざし、いのちの源である食を大切にして、自ら生きる力を高めること」を取り入れて、食育の取り組みをすべての組合員へ、地域へ、そして子どもから高齢者までひろげ、生産から消費まで、食の全体について理解が深まるようすすめます。
一人ひとりがつながり、いのちをはぐくみ、生きる力を高めます
ます。
○ 地域における「ともにつくり、ともに食べる運動」による食のコミュニケーションをひろげ、地域コミュニティづくりをすす
めます。
○ 「食」を軸とした「生産・流通・消費の循環ネットワーク形成」をはかり、組合員の参加と事業をひろげます。
組合員自身が食育の実践者になるような活動を推進し、組合内外に向け、地域と家庭での食育につなげます。また、社会的課題に目を向け、食育講座、体験型企画など、食生活の大切さを伝えます。
各委員会をはじめ、組合員活動の場などで食育への関心が広がる取り組みをすすめ、NPOや行政との連携、配送センターに食を中心とした地域のコミュニティや場づくりを構築していきます。
- 地域での大きな役割を担っている小学校等への出前授業を産地生産者や食育リーダー、PLAとともに推進する体制を整えます。
- 若年層をはじめ多様な生活シーンや地域に合わせた企画開催を推進します。
- 食を中心とした地域のコミュニティや活動の場づくりを広げます。
生産の現場を体験することも食育の一環と捉えることができます。農業体験や水田等での生き物観察などを通して、農業が生態系という自然の営みに支えられていることを学び、「ともにつくり、ともに食べる」関係としての生産者と消費者の相互理解と信頼を強めます。また環境保全や資源循環、地産地消など、食と環境のつながりを大切にしていきます。
食を全体的に把握できるように、生産や自然環境についての学習内容を取り入れていきます。パルシステム生産者・消費者協議会と連携し、産地へ訪問する産地交流や公開確認会、生産者を受け入れる生消協都県別交流会、産直連続講座、青年・女性生産者交流会をはじめ、様々な学習会も産地交流と位置づけ、産地の課題を共有、共感できる取り組みを行ないます。
- コア産地*3をはじめとする長年交流を続けてきた産地を中心に、組合員に理解が広がり利用につながる交流を行ないます。
- 産地へは、役職員や組合員を役割に応じて派遣し、産地の現状を組合員から伝えます。
- 地場野菜を貴重な地産地消の取り組みとし組合員が支える仕組みをつくります。
パルシステムでは、生産者と提携し、米や野菜、肉類など国産農畜水産物を供給して、食料の自給力向上をめざしています。「もっといい明日へ 超えてく」アクションに取り組み、商品の利用普及を通して、日本型食生活*4をすすめます。
- 「もっといい明日へ 超えてく」アクションを推進して商品を学び利用し、食料自給力を高めます。
- PB商品の産直原料化・国産化を更にすすめます。
- PLAを中心に商品学習をすすめる体制を強化します。
パルシステムでは、「食の安全」を最も重要な事業の柱においています。安全・安心な食品の選択や適切な調理方法を知ることは、食育の面でも重要なことです。食育の取り組みの中に“安全” “健康”の観点を盛り込み、互いに補いながらすすめます。
- 健康維持に必要な安全な食品を選ぶための学びあいの場を広げます。
- 生活習慣病の予防や改善につながる栄養バランスを考えた食生活を提案します。
- 食育リーダーを中心とし、日本の食文化を継承する実践活動を行ないます。
【語句説明】
*1 食育リーダー
食育活動をすすめるために組合員からの公募で養成された講師のこと。組合員向けに食育出前講座を行なっているほか、教育機関や地域イベントなどでも講座を開催しています。
*2 PLA
パルシステム・ライフアシスタントの略称のこと。パルシステム商品に関する情報を継続して学び、正確に把握し、 生産者の取り組みや想いと商品の良さをくらしの視点にたって多くの組合員などに伝え、商品に関する活動の活性化をすすめる組合員講師です。
*3 コア産地
パルシステム東京が特に交流を深めている「千葉県旭市」「青森県藤崎町」「新潟県上越市」の3産地のこと。
*4 日本型食生活
米飯を中心に大豆・野菜・魚などを多く摂る日本の伝統的な食事に、適度に畜産物などが加えられた食生活パターン。肉食中心の欧米型の食事と比較して栄養バランスがよいと評価されています。
2009 年3月 26 日制定
2018 年3月 29 日改定
2023 年 12 月 21 日改定