お知らせ
エネルギー基本計画見直しに対する意見書を提出しました
2024.9.23
2024年9月19日、パルシステム東京は エネルギー基本計画見直しに対する意見書を提出しました。
2024年9月19日
経済産業大臣
齋藤 健 殿
エネルギー基本計画見直しに対する意見
生活協同組合パルシステム東京
代表理事 理事長 松野 玲子
私たちパルシステム東京は、平和を基本とし「『食べもの』『地球環境』『人』を大切にした『社会』をつくります」を理念に掲げ、約53万人の組合員が、安心して暮らせる持続可能な社会の実現を願い、事業と活動をしている生活協同組合です。
東京電力福島第一原子力発電所の事故を受け、2011 年12月に「エネルギー政策」を策定、2023年4月には「環境方針」を改定し、2030年までの温室効果ガス削減の具体的な目標値を掲げ、持続可能な社会の実現を目指して活動しています。これまでも事業活動や組合員家庭における省エネルギーの推進、脱原子力発電運動、地域と協同した再生可能エネルギー普及活動に取り組んでまいりました。再生可能エネルギーを中心とする電力供給事業においては2021年から2022年にかけて電力市場価格の急激な値上がりにより経営難に陥り、また、多くの新電力事業者も倒産や事業停止に追い込まれました。そのような中でも、多くの組合員の協力を得ながら、「FIT電気(再生可能エネルギー)+再生可能エネルギー」比率を2023年度実績で70.5%とし、再生可能エネルギーの推進を続けています。
また、私たちは食と農のつながりをもって生活者として持続可能な共生の社会を目指しています。近年、地球沸騰化ともいわれる気候変動問題により、農業、漁業、畜産業の現場から、発育不足や収穫減少、作業中の熱中症、電力代高騰による経営悪化などの問題が叫ばれており、政府のエネルギー政策はいのちや生活に直結する問題です。
第7次エネルギー基本計画が、原子力にも化石燃料にも依存しない、次世代に向けた脱炭素社会のあるべき姿を描いたものとなるよう、以下意見を申し述べます。
1. 次世代、一次産業従事者を含む多様な立場の国民が論議に参加できる仕組みを要望します。また、消費行動やライフスタイルの選択を通じ脱炭素社会の実現に主体的に参画できるような情報提供を求めます。
気候変動問題は、国民の命やくらしに関わる重要な課題です。エネルギー基本計画の見直しにあたり、プロセスやスケジュールを広く周知し、多様な立場の国民が参加できる機会を設け、その声を計画に反映してください。とりわけ、総合資源エネルギー調査会などのエネルギー政策の決定プロセスに、気候危機の悪影響を大きく受ける第一次産業の関係者、気候災害や原発事故の当事者、将来世代などの参加を強く求めます。
また、環境省の「デコ活」(脱炭素につながる新しい豊かな暮らしを創る国民運動)などの発信力強化、国民一人ひとりが自身の消費やライフスタイルを持続可能なものにするために、各省庁と連携した啓発強化を求めます。
2. エネルギー需要量の大幅縮小を可能とする社会の構築を目指し、省エネルギー施策を強化してください。
脱炭素社会の実現のためには、エネルギー需要量を縮小させることが重要です。2023年に開催された「第28回気候変動枠組条約締約国会議(COP28)」で採択された決定文書では、省エネ改善率を2030年までに世界全体で2倍にするという目標が掲げられました。論議において大量電力消費が前提とされていますが、人口減や国土の制約に見合った生活・産業全般におけるエネルギー需要量を最小限に抑え得る健全な社会の構築を促し、さらに省エネルギー施策を尽くし、その上で必要量をいかにまかなうかを検討してください。 技術革新による省エネルギー施策を大いに期待します。
3. 原子力発電ゼロへの早期移行と工程の具体化を求めます。
東京電力福島第一原子力発電所の事故から 13 年が経過してもなお、多くの方々が避難を余儀なくされ、損害賠償、除染・中間貯蔵施設事業、廃炉・処理水対策、膨らみ続けるこれらに要する費用、風評被害対策など、課題は依然として山積したままです。
第6次エネルギー基本計画においては「可能な限り原発依存度を低減する」と位置付けられているなか、2023年にGX推進法のもと原発の最大限活用への方針大転換が行われました。そして2024年4月、世界最大の原子力発電所である東京電力柏崎刈羽原発において地元住民の同意がないまま燃料装填が開始されました。いまだ使用済み核燃料の最終処理問題が未解決であり、さらに能登半島地震により国民全体の不安が増大していることを踏まえれば、柏崎刈羽の再稼働を前提とした推進計画をすすめるべきではありません。また、原子力発電の新規増設費用を国民に負担させることはあってはならないことです。
4. 2050 年再生可能エネルギー100%に向け、2030 年の導入目標を国際的水準である 50%以上としてください。
日本のエネルギー選択において踏まえるべき「安全性」「環境(脱炭素化)」「安定供給(自給率)」を同時に満たす電源は再生可能エネルギーです。近年の化石燃料の価格高騰は、エネルギーを輸入に頼ることの危うさを明らかにしました。わが国の再生可能エネルギーの割合は21.7%と諸外国と比較しても低い水準で、地熱・水力などの資源が豊富に潜在するなか十分に活用が進んでいません。エネルギー供給の内製化を推進し、自立・分散型エネルギーシステムを構築することで、非常時の電源確保、エネルギーの効率的な活用、地域経済の活性化・雇用の創出につながります。環境や社会の長期的な持続可能性を考慮すれば、2050 年には 100%を目指すべきです。
「第28回気候変動枠組条約締約国会議(COP28)」で採択された決定文書では、再生可能エネルギーを2030年までに発電容量を世界全体で3倍にするという目標が掲げられました。IPCC 1.5℃特別報告書の想定水準である、2030 年時点で 50%以上の再生可能エネルギー導入を目指し、蓄電池の早期開発をはじめあらゆる政策を総動員し強力に進めることを要望します。
5. 石炭火力は 2030 年までの段階的廃止を求めます。
石炭火力発電における温室効果ガス排出量は非常に高く、電源構成比も30%を超える水準で気候変動問題に大きく影響します。2024年4月の先進国7か国(G7)気候・エネルギー・環境相会合では「2035年までに石炭火力発電の段階的廃止」が合意されました。日本は水素・アンモニア混焼やCCS(炭素回収貯留)の技術が排出削減対策に該当するとしていますが、有効性、経済性、環境影響などに懸念のある不確実な技術であり、石炭火力の温存に繋がる懸念があります。
石炭をはじめとした化石燃料からのダイベストメント(投資撤退)も含め、脱石炭火力への世界の潮流の中で、限られた政策資源を終息に向かう技術分野に投入することはやめるべきです。
以上
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