活動レポート
<2023.7.15(土)開催>子どもに伝える戦争と平和~語りつなごう 平和への願い~<後半 子どもに戦争や平和を伝える絵本>
2023.8.16
クレヨンハウスが紹介 子どもに戦争や平和を伝える絵本
後半は、株式会社クレヨンハウスのスタッフの方が登壇し、子どもに戦争や平和について伝えるときにおすすめの絵本を紹介しました。
株式会社クレヨンハウスは吉祥寺と大阪に店舗のある、子どもの本の専門店。1976年の創業時から、子どもの本とその文化を見つめてきました。
クレヨンハウスには、創業当時から「平和について考える絵本」のコーナーを設けて、大切にしてきました。
代表の落合恵子氏が、絵本の専門店を作るという時に、お客様からの「子どもに、平和について、戦争についてどういうふうに話したらいいかわからない」という声でできたコーナーです。今年で47年目になり、今でも同じコーナーがあります。
あの湖の、あの家におきたこと
ドイツのある家のストーリーを使って、戦争が人にどんなことをもたらすのかということを伝える絵本です。
東西ドイツのちょうど国境の壁ができるところにあったお家の話です。住んでいた家族が第二次世界大戦で、ナチスから逃げることになり、次に住んだ人たちもまた戦争で・・・と続きます。その家は実在しており、今は平和の資料館のような形で使われています。中学生や高校生にもおすすめの本です。
ベイビーレボリューション
ロックミュージシャンの浅井健一さんの「ベイビーレボリューション」という曲に現代アーティストの奈良良智さんの絵をつけたもの。
戦争をやっているところに世界中からハイハイで何万人、何億人というベイビーがやってきて・・・というシンプルな内容です。「なんで大人たちはあの戦争を止めなかったの」なんて、赤ちゃんは口に出して言うことはできないけれども、きっと後々「なんであのとき、大人たちは止めなかったんだ」って思うよね。というメッセージとしても受け止められます。
最近、ウクライナ戦争をきっかけに、子どもにどうやって絵本を通して戦争のことを伝えていったらいいかというお問い合わせをよく受けています。そのときにご紹介している絵本を次にご紹介します。
ニュースで連日ウクライナ戦争の話題を放送していた時期に、あまりテレビもつけたくない、でも保育園や幼稚園で話を聞いてきて、子ども同士が戦争の話をしている、そういう時に、どういうふうに伝えたらいいのかわからないと。
学校の司書さんなんかも同じ悩みがあるみたいです。毎年夏の時期なると、平和の本とか置くコーナーを作るけれども、その時に、自発的に本を手に取る子もいれば、はだしのゲンも含めて、本の見た目が怖いから、その時期だけは本好きだけど図書室に近づかない、そんな子もいるということでした。
それでもやっぱり、本を渡して一緒に読んであげるといいのかなということも思います。
せかいで いちばん つよい国
戦争について描かれている絵本は、「答え」が描かれているものはあまりありません。「これが正しい」「こういうふうに戦争は始まって、こういうふうに終わる」というものがないというふうに描いているものが多いです。
例えばこの「せかいで いちばん つよい国」。架空の国のお話です。すごく強大な国が一つありました。世界中の国を支配して、最後に一つだけ残った、今まで見向きもしてなかった小さい国を、ついでだからあそこも配しに行くかと、その国に戦争をしかけに行きます・・・というお話。
最後に、大きい国の王様が自分の子供にその小さい国の子守歌を歌ってあげるのですが、これも答えが描かれてはいない。でもロシアだったり、ウクライナだったりを考えるときに結びつくんじゃないかなということで、紹介することもあります。
この本を読んだという児童文学科の大学生になんで選んだのかと聞くと「ポップな表紙だからちょっと手に取ってみた」という理由で、感想としては「これを読んだら子供はどんなふうに思って、お母さんはどういうふうに思って、どんな話をするのかな」というものでした。まさにこの感想のためにあるようなお話です。作者のデビット・マッキーさんっていうのは虹色のゾウのエルマーという絵本の作者で、ちょっと目を引くポップな絵が特徴です。
なぜあらそうの?
この本には実は文章がありません。はじめは花を持っているカエルがいて、そこにネズミが出てくる。そのネズミはこの花を見て、カエルに飛びかかって花を手に入る。今度はカエルが・・・。最後はもう草も生えない、花も生えないような場面になるのですが、これもどっちが悪い、どっちがいい、何が欲しいと問いかけられる本で、店頭でも手に取られる本です。
で、これがまさにロシアの作家さんが描いた本です。以前、保育園に行っている子どもが、ロシアはバカだと言うようになったという話を聞きました。ロシアの全員がバカで、全員が悪者なのかな、というような、自分の中でちょっと疑問に思うということが、やっぱり大切なのかなと感じますね。
先ほど富田さんのお話で、僕もすごく印象に残ったのが、「知らないうちに戦争になっていた」ということ。子供はもちろん、後で考えれば、なんで、誰が悪かった、どこで引き返せばよかった、こっちを選べばよかったって思うことはあると思います。
父さんはどうしてヒトラーに投票したの?
これは結構長いので、小学校中高学年、中学生ぐらいからおすすめの本です。
ヒトラーは急に現れて、権力を持ったわけではなく、国民が、自分たちで選んだんだということを改めて気づかされる本です。
1929年の世界恐慌が終わってからの1933年が舞台。みんな仕事がないんですね。貧しくって食べるものにも困る。その時にナチス党っていうのが出てきて、彼らに任せたら仕事にありつける、豊かな生活ができるようになるっていうふうに考えた人たちが投票をした。でも、それって、悪いことなのでしょうか?ヒトラーを選んだ全員が悪い人、国民全員が悪い人っていうわけでもないんじゃないかな、自分がその時のドイツにいたらナチストヒトラーに投票しなかったのかなというような問いかけにハッとさせられるような感じの絵本です。
戦争が終わるまであと2分
今日持ってきた本の中で一番新しい、カナダの青年の実際の話をもとにした絵本です。割とポップで読みやすい絵です。カナダのある村で、二分違いで生まれて、本当の兄弟のように仲良しな二人の子ども。後の方に生まれた男の子の方は何をするにものんびり屋さんで、先に生まれた方は何をするにも先頭に立ちます。そんな感じでずっと親友同士で大人になったときに、戦争になって二人は兵士になるんですね。で、激しい戦争の中でも二人ともなんとか生き残っていた。
そのうちに偉い人たちが、戦争をもういい加減やめましょうという話し合いを、会議室の中でします。いつ戦争をやめようか。じゃあ11月11日の11時にやめましょうとなりました。翌日、そのニュースが広がるんですけど、前線ではまだまだ戦闘が続いている。そして11月11日10時58分・・・。
戦争って時間で決めて終われるものなんだろうかっという問いかけがあり、結構長いのですが、これも小学校中学年ぐらいから、少し絵がすごく入りやすいので手に取りやすくおすすめです。
平和と戦争
この本も本当に0歳くらいから親子で読んでいる人が多いかな。就学前の3歳くらいからでも手に取られます。
すごくシンプルです。谷川さんが文を書いていて、ノリタケさんっていうイラストレーターの方が絵をつけてます。平和な時と、それから戦争の時を見開きで対比しています。
「平和の僕」に比べて、「戦争の僕」はちょっと膝を抱えて、なんだか悲しそう。
「平和の父」・・・子どもと一緒に遊んでるのかな?「戦争の父」・・・銃を抱えて戦争中ですね。
「平和の夜」と「戦争の夜」。
「味方の赤ちゃん」と「敵の赤ちゃん」。
平和と戦争の対比にだんだん引き込まれていって、そのうちに、あれ?戦争って、敵と見方がしてるんだよね。敵と味方って何が違うんだろうっていう問いかけにもなっている本です。シンプルに手描かれているからこそ、その対比が余計に伝わりやすいく、まさに平和について考える一冊なのかなっていう気がしますね。
風が吹くとき
ロングセラーでベストセラーの本です。
スノーマンっていう幻想的なクリスマスの絵本があるんですけど、その作者レイモンド・ブリックスが描いた、核兵器が爆発したときのある老夫婦のお話です。
戦時中の片田舎で、核兵器が落ちる前、落ちた後の様子がコミックのようなコマ割りで描かれています。老夫婦がいろんな情報をラジオから聞いていて、「なんだか恐ろしい爆弾を敵が作っているらしいよ。その爆弾は、上からふってくるらしいから、板を立てかけておいてその下に逃げ込むんだ」「アルミホイルを窓に貼っておくんだ」とか。ある意味滑稽とも思えるような対策がラジオや噂で流れてきます。で、爆弾が降ってくる。放射能についても噂しかわからない。そのうちにだんだんだんだん衰弱していくんですね。その様子も絵からもすごく伝わってくるっていうような結構怖い本です。
市民と、核兵器の間にある距離っていうのがすごく伝わってきます。
ゲルニカ
ちょっと番外編です。「ゲルニカ」っていうピカソの大きな絵についての本です。
美術的な本としても捉えられますし、ゲルニカに込められた思いや執念がすごく感じられます。でちょっと大人向けですが、こんなものもクレヨンハウスにおいてあります。
はなのすきなうし
やっぱりこう直接戦争について描いたものだったりすると結構怖い、手に取りづらい、敬遠しがちっていうことがあるのですが、この本は大人になって改めてよむと「平和の本だったんだ」と気づくような一冊です。
これもロングセラーの本です。あるところに体が大きいフェルジナンドという牛がいて、この牛はすごく花を愛でるんですね。花に囲まれてのんびりするのがすごく好きな牛。あるとき、スペインの闘牛の牛としてフェルジナンドが闘牛場に連れいかれて・・・というお話です。お話しとしてもすごく楽しめる一冊ですが、改めて読み直してみるとなんか平和について静かに描かれています。
話の長さでいうと5歳前後くらいから読めるのかな。
へいわってすてきだね
これは沖縄の与那国の六歳の子が作った詩に、長谷川義史さんという絵本作家が絵を描いています。長谷川さんはすごくユーモラスな関西大阪在住の方で、「いいからいいから」とか「おじいちゃんのおじいちゃんのおじちゃんのおじいちゃん」とかたくさんの絵本を書いています。
沖縄県平和記念資料館の平和のメッセージに寄せられた詩で、朗読したときに、すごく感動を呼びました。
僕も僕のできることから頑張るよっていうところが一番心にくる本です。
海外の絵本と日本の絵本の違いを感じることはありますか?
平和の本で言うと、特に最近は、移民について描かれている本は圧倒的に海外の本が多いです。
で、日本の場合、20年~30年くらい前の絵本だと直接的な第二次世界戦争の時に、空襲や実際にあったことを題材にしたものが多かったのですが、最近だと、問いかけるような本が多いかなという感じはあります。
でも、どの国の作家さんでも、いろいろ調べて描いているので、どっちがいい、悪いって描いているものはないというのは共通してあります。
今パッと思いついたところでは、「ジャーニー 国境を越えて」とか「戦争がやってきた日」がありますね。
戦争がやってきた日っていうのは女の子が主人公で、あるとき、急に戦争がやってきて、大好きだったものとすべて切り離され、親と離れ離れになっちゃって、全然知らないところの学校にきて・・・というお話です。最後は子どもたちが少しずつ椅子を持って近づいてきて、受け入れてくれる、という、これは本当に、今実際に起きていることを描いてるんだろうなっていう感じがします。それで、戦争があったためにやってきた外国の子を「受け入れる」っていうことを考える一つの本だと思います。
日本以外の国で原爆を扱った本はご紹介いただいた本以外にあるのでしょうか
「計画は秘密です」っていう本があります。砂漠のとある地下深くの施設で秘密の研究が行われているっていうので進んでいくお話がポップに描かれています。平和や戦争の絵本はやっぱり描いている方も手に取ってもらえ
るような作りや仕掛けがされていますね。
クレヨンハウスのお二人、ありがとうございました!
前半は、長崎で被ばくをした富田芳子さんによる体験談です。