活動レポート

【開催報告】復興活動って、私にもできる? ~話を聞いてみよう~ |『パル未来花基金』報告会を開催しました

2015.11.20

9月5日(土)パルシステム東京新宿本部で、第1部の報告会では、助成金を活用したグループからの報告と、団体同士での情報交換をしました。午後の第2部は、2会場に分かれて、下期申請説明会、上期助成グループの会計説明会を開催しました。

12グループが充実した活動を報告

  第1部冒頭に、野々山理恵子理事長の「組合員の支援活動は、生活者ならではの視点で考えた活動。パルシステム東京の誇れる活動のひとつに成長しています。みなさんの報告が今後のパルシステム東京の復興支援活動へのヒントになる と期待しています」の挨拶のあと、12グループが報告しました。

「星の語り部」

仮設住宅などで、移動プラネタリウムや星空観測会などを実施する「出前プラネタリウム」に取り組んでいます。子どもも大人も、日常を忘れ、星の世界を楽しんでもらっています。助成金で、障がいのある子どもの施設や親がいない子どもたちの施設にも訪問できました。ただ、イベントの最中、会場を走りまわり続ける子どももいて、被災地の子どもたちはストレスを抱えていると感じることも。今後は、心の交流も図っていきたいと思っています。

「福島こども支援・八王子」

福島から親子を招待し、八王子と福島の親子が参加する交流合宿に取り組むグループです。合宿では、『県内は、放射能について口には出しづらい状況です』『保養企画は、同じ思いの人と話せ、本来の自分に戻れるから大切です』といった声が聞かれ、県外への保養企画がまだまだ必要とされていると実感しています。また、八王子センターから食材の提供も受け助かりました。今後も交流を深める企画を継続させ、運営面での充実を図っていきます。

「被災地の現状を聞き、私たちが東京でできることを考える会」

震災直後は物資を送るなどそれぞれが支援活動をしましたが、だんだん被災は遠いものに…。日常的にできることの糸口をつかもうと、基金で増島智子さんを講師に迎えた『現状を聴く会』を開催しました。『人を助けるのは人でしかないと実感しました』という言葉を共有。その際に聞いた『まけないぞう』タオルの販売をセンターまつりなどで販売協力をしました。小さな活動でも、コツコツと、あちこちで展開することが大切だと思います。

「アンサンブル・カーナス」

音楽家にもできる支援をと、ピアノとトロンボーンの演奏会を渋谷で開催しました。助成金は会場費とチラシの作成費などに利用。その効果もあり会場は満席に。ただ、開催目的のひとつ、「不自由な避難生活から開放される時間を提供する」の実現のため、東京に避難されパルシステム東京の組合員になった方たちに招待状を送りましたが、残念ながらお一人のみでした。今後は被災者のみなさんにこちらから音楽を届ける活動へと発展させていきたいです。

「はんど・めいどOHANA」

東京に避難中の被災者の方々に慣れない土地での生活を楽しんでもらい、参加者同士のコミュニティを広げてもらうために、手作り講習会の開催を計画しました。しかし避難者に告知しようと思っても個人情報の壁に阻まれ講習会は一度も開催できませんでした。

ただ、被災者の方たちの手作り品の委託販売や、同じ助成グループの「福島こども・八王子」の親子合宿での手作り講座開催は実施。今後も講習会や委託販売などで支援を続けます。

「ハート・のんびる」

活動のきっかけは、支援で訪問した仮設住宅の方の『私たちのことなんか忘れるんでしょ』の言葉。忘れない活動として、助成金を3つの活動に使いました。

仮設住宅に独居する高齢者にひざ掛けを送る活動、被災者の手づくり小物販売(売上金を全部被災者に)をし、被災地の現状を知ってもらう販売活動、被災者の方に東京にきて一緒に販売に参加してもらい、どのように販売されているか、お客さんとの会話や交流もできる機会を設ける交流活動です。今後も活動を続けていきます。

「Neko smile」(ネコ スマイル)

パルシステム東京の『パル・パラソルカフェ(*)』でつながりのできた根古の仮設住宅の方たちが手編みのクラフト籠を、東京で販売したり、デザイナーの協力でオリジナルデザインの雑貨を開発したりしています。被災者からは、「売り上げ金で孫にプレゼントできた」など、喜んでもらえました。ただ震災後と比べると、被災者は気力を失いつつあると思います。仮設を出る人もいて、残った人はますます未来が見えない状況。今も支援の継続が必要です。

「ならは盛り上げ隊」

福島県会津美里町に避難している楢葉町出身の方たちへの支援活動として、布ぞうりの販売を手伝っています。仮設住宅のコミュニケーションづくりや、一人ひとりの生きがいになれば、と思っています。『布ぞうりフェスティバル』も開催。その過程での行政の方たちの多くの協力に、「福島をよくしたい」という思いを感じました。ひきこもりがちな避難者の方たちがフェスティバルに足を運び、会場で語らいを楽しまれたことも大きな喜びでした。

*パル・パラソルカフェ
  2011年度に開催したパルシステム東京初の組合員参加の被災地支援活動。宮城県東松島市の仮設住宅でカフェ(軽食、飲料を無償提供)を開き、組合員ボランティアによる傾聴活動を行なった。

「東京の親戚プロジェクト」

放射線被ばくを心配しながら福島で暮らす家族に、都内でのんびりと過ごす機会を提供する活動です。空き住宅やアトリエの一部を借りて宿泊スペースを準備。2家族を延べ16日間、受け入れました。パルシステムの食材も用意しました。宿泊者からは、『心配だけど避難はできない。せめて短期だけでも』『身体的リスクを抱えながらの生活はストレス…』などの声が届いています。これからも要望がある限り、活動を続けます。

「教育・芸術・医療でつなぐ会」

震災後に来日したドイツの教育家たちの復興支援活動をサポートしたボランティアが集まり、岩手県金ヶ崎第一小学校で水彩画を描くワークショップを行いました。福島から離れていても金ヶ崎は放射能のホットスポット。震災のショックばかりでなく、被ばくへの不安も市民の心にあるようです。子どもが描く様子を見ていた親御さんも、美しい色を見てホッされたようでした。あっという間の2時間でしたが、暖かな雰囲気で過ごせました。

「石巻スコッパーズ応援団」

東北地方の宴会芸、そんなスコップ三味線の演奏家「スコッパーズ」を招いたコンサートの収益を被災地に届ける支援を継続してきました。仮設住宅のみなさんを日帰り温泉旅行にお連れするバス旅行を行いました。ひきこもりがちなみなさんも、この日を指折り数えて待ってくださり、『また企画してくださいね』と喜んでもらえました。たった4時間の温泉滞在時間でしたが、わずかな生きる希望になれたかと思います。

「チャイるのネット・子ども支援WEEK」

尿中の放射性セシウム量を測り内部被ばくを調べる検査を広めています。助成金をそのまま検査費にすることもできますが、多くの人に福島への関心を持ち続けてもらうため、商店街のカフェや小売店に『尿検査募金箱』を設置してもらったり、街頭で募金を呼びかけたりしました。その際のチラシは助成金で作成。また行政のケアが少ない宮城県で、被ばくを心配する親たちへの尿検査学習会も行いました。

組合員による支援活動を復興活動の専門家が評価

12グループの報告後、東京ボランティア・市民活動センター災害担当の加納佑一さんがさまざまな活動に取り組んできた経験から、組合員の支援活動について講演しました。

 

 

 

被災者のできないことをカバーする

4年が経過し、復興という過程に入った被災地 では、新たな課題が生まれています。被災者同士のいさかいや、仮設住宅の人々に取り残され感が生まれるなど、行政だけではカバーしきれない課題 が多くあります。」と実情を話す加納さん。

  「しかし、被災者になったからといって、すべてができなくなるわけではありません。できない部分をカバーすることが支援という意味では、『内部被ばくの不安をもつ親同士の交流の場を提供』したり、『手作り品を販売し売り上げを被災者に届けて彼らの自信を引き出す』といった組合員さんの活動も、できないことへの支援ですね」と評価しました。

  支援活動では、① つぶやきも含め、被災者の声を聴く   ② たまに会う関係を保ち、忘れていないよと伝える   ③ 当事者や他の支援者といっしょに取り組む の3つのことが大切と話す加納さん。「基本的に、ボランティアにできることはたいしたことではありません。しかし、すべてを失った被災者が立ち上がることも簡単ではないので、支援は必要です。それはちょっとした支えです。被災者自らが、支援が必要と思ったときに応じてあげられる関係を保ち続けること が大切です」と話しました。

多くの人を巻き込み、風化を防ぐ

 さらに、「4年という時間は、被災の風化も支援の風化もたらしました」と続けます。「多くの人が関心をもつことで、よりよい支援になっていきます。今回の報告にあった、『福島の親子保養合宿の際に八王子市民にボランティア参加を呼びかける』や、『お店に尿検査費を集めてもらう』などの工夫は、関心のない人たちが現状を知る機会になり、風化を防ぐ ことになります。たくさんの人が関われる環境を作っていますね」と評価しました。

  これからも、“小さなことでも敢えてお願いする”などの工夫で、多くの人を巻き込み、活動を広めてほしいと期待しました。

行政の支援が打ち切られる…。今こそ“つながり”が必要

最後に、今求められる支援のひとつとして、東京に避難している7200人への支援活動 を紹介する加納さん。

  「『Suicaをいっしょに買ってくれる人がほしい』といったものから、厳しい生活への不安まで、東京という知らない土地での生活で、一人ひとりはそれぞれ違った課題を抱えています。さらに、今後は仮設住宅の入居期限を迎える方が多くなるなど、避難者の生活がさらに厳しくなることは確実です。同じ立場の人同士が交流する場や、支援者とのつながりは必要です」と指摘します。

  しかし、避難の実態がわからないことがネックになり交流ができていない現状も。「状況の変化に応じた避難者同士の助け合いが今こそ求められます。まずは、避難してきた人たちのコミュニティづくりをめざし、避難者交流イベントの開催を計画中です。開催の際には、ぜひ参加し、ともに交流してください」と訴え、加納さんの講演は終わりました。

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  報告会の閉会の挨拶に立った辻正一専務理事の、「被災地には風評と風化という、二つの風 が吹き、今も苦しい状況が続きます。パルシステムは、全国のどの生協より被災地の商品を販売しました。被災地を応援したいという組合員さんの意識 の高さだと思います。今後も、風評や風化に操られることなく、商品の購入や、組合員や生協としての活動で、被災地を支援しましょう」の言葉で、報告会は終了しました。

パルシステム東京は、組合員による被災者支援活動をサポートする「パル未来花基金」を2014年7月に設置。2014年度下期には12グループを、2015年度上期では、6グループを助成しました。