活動レポート
落差2mでもしっかり発電!那須野が原小水力発電施設を見学
2016.7.1
パルシステム東京は6月16日(木)、パルシステムグループに電気を供給していただいている那須野ヶ原小水力発電施設等をバスで訪れる見学会を開催しました。日本のエネルギーの未来や、発電事業に関心のある組合員・役職員ら17名が参加し、小水力発電の仕組みや、発電事業に込められた想いを学びました。
小水力発電とはどのような発電?
2016年4月から電力の小売りが自由化され、一般家庭でも電気を選べる時代になりました。そんな中、原子力発電にも石油による火力発電にも依らずに、自国内でのエネルギー自給率を高められる「再生可能エネルギー」に注目が集まっています。とりわけ小水力発電やバイオマス発電は、時間帯や天候に左右されず、安定的な発電が見込める電源として期待されています。
今回訪れた那須野ヶ原土地改良区連合(栃木県)は全国でもいち早く農業用水を活用した小水力発電に取り組み、合計最大出力1,900kWの発電事業を行っています。土地改良区連合として農業用水の管理をするかたわら、小水力発電事業への投資を拡大し、年間3,121t(*)のCO₂削減で、地球温暖化防止にも貢献してきました。
*平成25年度実績値
発電事業に込められた想い
定常的に水路に水が流れている必要がある小水力発電ですが、実は那須野ヶ原は元々水資源に乏しい地域でした。ガラガラの岩の上に降り積もった火山灰に、降った雨や流れる川の水が瞬く間にしみ込んでしまう特異な地形で人が住めないため、かつては狩場として利用されたことも。1973年に国の総合開発事業として深山ダムが完成し、農業用水が整備されるまで、那須野ヶ原の開墾の歴史はまさに水との戦いであったといいます。
那須野ヶ原は那珂川と箒川に挟まれた約40,000haの広大な扇状地。中央部に位置する熊川と蛇尾(さび)川は、大雨の時だけ一時的に川になるいわゆる「水無し川」。
(写真の左から右下へ向かう4本の川の内、一番上が那珂川、真ん中のY字状が熊川と蛇尾川、一番下が箒川)
先人たちが一鍬一鍬、命をかけて切り開き、いのちをつないできた那須野ヶ原の歴史を踏まえ、那須野ヶ原土地改良区連合・参事の星野恵美子さんは参加者に問いかけました。
―「みなさんはお米を食べていますか?」
日本人の歯は臼歯が多く、これは米を食べるのに適している証拠。お米にはものすごいエネルギー量とビタミン・鉄分・カルシウム・たんぱく質などが含まれ、日本人の命を支えてきました。
―「では、1粒のもみから、どれくらいのお米が採れるか、ご存じですか?」
「1本の穂には約70粒。1粒の米からできた苗では、400~500粒以上収穫できると言われます。ちなみにご飯一膳は約3,200~3,300粒。」1haで9.33人も養えるという日本の農地は世界にも類を見ないほどの人口扶養力を誇ります。
ところが、日本のお米の消費量は年々低下しています。お米を食べない人が増えると、米の価格が下落し、作り手が減っていきます。手放された田んぼは草が茂り、やがて木が生え、元の田んぼに戻すことが困難になってしまいます。また、手入れのされない木々はすぐに成長が止まってしまうため、CO₂の吸収も活発ではありません。「日本の国土がおかしくなってきている。」と、星野さんは警鐘を鳴らします。
(写真はイメージです)
今、お米は収穫された後、もみ殻を取り除いた玄米の状態でライスセンターに運び込まれ、一定温度で貯蔵されます。つまり、電気が必要なのです。いくらお米を自給していても電気がなければ備蓄ができない。だからこそ、お米とともに電気も作ることで、いのちをつなぎ続ける努力をしていきたいと、星野さんは小水力発電にかける想いを語りました。
参加者からは「日本の未来を見据えて米と電気を自給するという気概に心から感動しました」「子どもたちの未来のために、きれいな環境やエネルギーを残したいと感じました」といった感想が寄せられました。
(取材:広報室)