活動レポート

化学物質にさらされない健康な暮らしときれいな海を守るために私たちができること|学習会「プラスチックスープの海と使い捨てプラスチックの削減」

2016.8.19

パルシステム東京は8月8日(月) 東京農工大学教授 高田 秀重氏を講師に、学習会『化学物質にさらされない健康な暮らしときれいな海を守るために私たちができること「プラスチックスープの海と使い捨てプラスチックの削減」』を開催しました。
参加者77人

年々増加するプラスチックの生産量と海洋汚染

今、全世界で年間3億トンのプラスチックが生産されていて、そのうちの半分は容器包装に使用されています。
日本では一人あたりに換算するとPETボトル100本、レジ袋300枚のプラスチックを毎年使用していることになります。
ごみ収集されずに路上や地面に落ちているプラスチックは、雨に流されて川から海に流れます。衝撃や劣化によりプラスチックは細かくなりますが、分解はされません。
このプラスチックの破片が世界中の海に漂っています。その量はおよそ27万トンになります(2014年度データ)。

海に漂うプラスチックの生物への影響

プラスチックの破片はえさと一緒に飲み込まれやすく、今までに600種以上の海洋生物(海鳥、魚、ウミガメなど)の体内から検出されています。
飲み込んだプラスチックが胃をふさいで栄養失調になったり、胃の内壁を傷つけたりしているなどの問題が指摘されています。添加剤として含まれている環境ホルモンの影響も懸念されています。
ハシボソミズナギドリという海鳥の場合は、1羽の胃の中にあるプラスチックの量は0.1~0.6gあると推測されています。人に換算すると10~60gの量が胃に入っている計算になります。この種だけでなく、他の種の海鳥についてもプラスチックの取込は報告されていて、世界の90%以上の海鳥がプラスチックを摂食していているという推定もあります。

約60gのプラスチック

約60gのプラスチック

また、プラスチックは油を吸着する性質があるため、海中の工業用の油、農薬などの有害化学物質を吸着して有害化します。周辺海水中から汚染物質を吸着したプラスチックの汚染物質濃度は、周辺海水中の10万倍~100万倍にもなります。
この有害化されたプラスチックを生物が体内に取り込むと、たとえプラスチック自体は排出されても化学物質が体内に残り、生体組織に移行、蓄積されてしまいます。
室内実験では化学物質が吸着したプラスチックを摂食した生物(メダカ等)の肝機能障害が観測されています。

気づかずに家からも排出されるマイクロプラスチック

5㎜以下のプラスチックを「マイクロプラスチック」といいます。プラスチック製品の破片、化学繊維の衣服の洗濯時の繊維くず、洗顔料などに含まれるビーズ(スクラブ)、メラミンフォームスポンジなど、私たちは気づかないうちにたくさんのマイクロプラスチックを水に流しています。そしてマイクロプラスチックも水中から有害化学物質を吸着することには変わりがありません。
また、海洋に流れ出たマイクロプラスチックは除去することができません。あまりに小さいため、生物の卵やプランクトンも一緒に除去することになってしまうからです。

砂浜の砂の中に混入しているマイクロプラスチック

砂浜の砂の中に混入しているマイクロプラスチック

マイクロプラスチックの汚染を深刻化させないために、国際的にプラスチックごみの削減の取り組みが求められています。

きれいな海を守るために私たちができること

高田教授から「きれいな海を守るために私たちができること」として下記の提案がありました。

〈私たち消費者ができること〉
・プラスチック、特に使い捨てのものの使用を極力避ける

〈生協(流通) に考えてほしいこと〉
・過剰な包装の見直し
・紙の包装への切り替え
・量り売り、切り分け、集団購入の推奨など

最後に高田教授は、「使い捨てのプラスチック容器に入ったものを買う前に、安全な代替容器に入ったものはないかをよく考えていただきたいですね。 ほんの少しの利便性のために、将来の人類に汚染を残していいのでしょうか。
「人からものを借りたらきれいにして返す。」これは人として当たり前のことです。
地球は将来の人類からの借り物です。汚染物質などを残さず、きれいにして次世代に渡したいものです。」と話しました。

パルシステム東京は今後も環境に関する学習会や取り組みを企画しています。
詳細は決まり次第ホームページや週刊WITH YOUでご案内します。
ぜひご参加ください。