活動レポート

水が育む「産直米」と「電気」 ~JA山形おきたまパルシステム米生産部会公開確認会~

朝日山系の雪解け水が流れ込む水路が張り巡らされているJA山形おきたま一帯。

朝日山系の雪解け水が流れ込む水路が張り巡らされているJA山形おきたま一帯。

パルシステム東京では7月19日(木)、20日(金)の二日間、「JA山形おきたま」(山形県長井市)で公開確認会を開催しました。パルシステムにとって長年交流を重ねてきた“老舗”の産直産地での、実に10数年ぶりの公開確認会。生産者も監査人として参加した組合員も、期待と緊張の織り交ざった再会となりました。

JA山形おきたま公開確認会 2018の様子(動画)

「水と大地と人と」~東北、山形の価値を伝える機会に~

公開確認会は、生産者と消費者が産地で生産状況を確認し合うパルシステム独自の制度で、「二者認証」とも呼ばれます。2010年度からは会員生協主催による開催も始まり、パルシステム東京では昨年のトキワ養鶏(青森県)に続き、再び東北の地での開催に。

生産者、監査人をはじめ128名もの参加者が一堂に会しました。

生産者、監査人をはじめ128名もの参加者が一堂に会しました。

「東日本大震災を経て7年。首都圏との交流を経ながら新たな東北の価値を、ここ山形から発信できることを光栄に思います」と語る木村さん(JA山形おきたま代表理事組合長)の言葉は、すべての参加者の思いを代弁しているかのようでした。

JA山形おきたま一帯は、古来から朝日山系に育まれた雪解け水が管内の田畑を潤してきた日本有数の米どころ。「山形つや姫」はデビュー以来、その高いブランド性で人気に火が付き、パルシステムへの出荷量も右肩上がり。2016年には同地域で野川土地改良区による小水力発電事業も始まり、地域の新たな「宝」に。人気ブランド米の生産とともに発電産地としての地域活性と共生の歩みが見られるとあって、公開確認会は多くの注目を集めました。

「この雪解け水がつや姫の“艶”を作り上げるんだ」

『エコ・山形つや姫』は1998年に山形県内で育成が開始され、2008年に奨励品種に指定されました。この人気銘柄を主力に、パルシステム東京との交流が深まっていきました。

外観については「艶がある」、味については「甘みがある」――つや姫は「冷めてもおいしい」とも言われ、食味ランキングでは常に上位に入賞。農薬・化学肥料の使用回数を慣行栽培の1/2以下に抑える“特別栽培”の取り組みが記された帳票類の解説でも、そのきめ細かな対応、嘘のない正直な取り組みは産直産地屈指とも感じられました。

監査人が栽培記録などの帳票類をチェック。生産者のこだわりの一端を肌で感じました。

監査人が栽培記録などの帳票類をチェック。生産者のこだわりの一端を肌で感じました。

山形県のつや姫は厳しい基準検査を経ないとそのブランド名を冠することはできません。指定を受けた圃場で、特別栽培で育てるだけではなく、食味を左右する「玄米粗タンパク質含有率」が6.4%以下(水分15%換算)にならなければ、いかに同じ栽培を経たとしても「山形つや姫」として市場に出すことができないという厳しさ。

「この雪解け水がつや姫の“艶”を作り上げるんだ」と米部会長の飯澤さん。なだらかな傾斜地に広がる田んぼを前に、自宅にも注がれる雪解け水を参加者にふるまいつつ語りました。70歳を越えるとは思えない身のこなし、佇まいはとても印象的でした。

『エコ・山形つや姫』が育つ広大な田んぼで、栽培のこだわりを学びました。

『エコ・山形つや姫』が育つ広大な田んぼで、栽培のこだわりを学びました。

「次世代に続く米づくり、電気づくりを続けていきます」

2011年に完成した長井ダムにより、管内の水利はめざましく向上しました。それまで“暴れ川”として折にふれて氾濫していた野川も、ダム完成後は緩やかな流れをたたえ、そして電気を作り出しています。

野川土地改良区の工藤さんは「この川は、電気の川なんですよ」と胸を張ります。野川ダムから“おすそ分け”された水は24時間365日電気を作り続け、しかもその水はそのまま本流に戻り、田んぼに注ぎ込みます。自然の力を借り、循環していくこの「水」は“命の水”と言っても過言ではありません。

小水力発電所は24時間、356日、自然のエネルギーを作り出しています。

小水力発電所は24時間、356日、自然のエネルギーを作り出しています。

「地域循環型農業を、パルシステムとともに私たちは長年取り組んできました。発電の恵みも頂戴することで、その本質を私たち自身、より深くかみしめることになったんです」と工藤さん。東日本大震災に伴う原発事故で避難を余儀なくされた福島の方々の多くも、ここ長井市に居を求めてきたと言います。以前から来訪者にはあたたかいおもてなしを施す風土の山形にあって、工藤さんたちも誠心誠意尽くしたといいます。

その経験と教訓が、この小水力発電への挑戦につながっている――原発に依存しない社会づくりを産直産地自身が体現することに大きな意味がある、とのメッセージは参加者の心を深く打ちました。

公開確認会の終盤の発表では、「ここまでの対応をしてくださっていることに敬意を表します」と監査人たちの感銘が聞こえ、「産地受け止め」では飯澤さんから「これからもパルシステムと組合員の皆さんに支えられながら、私たちは次世代に続く米づくり、電気づくりを続けていきます」との誓いが。新たな交流の扉が開かれた瞬間でした。

産直産地とパルシステム、組合員がともに支え合い、学び合っていくことを再確認した二日間でした。

産直産地とパルシステム、組合員がともに支え合い、学び合っていくことを再確認した二日間でした。