活動レポート
おうちで産地交流~コウノトリ育むお米~を開催しました
2020.11.8
兵庫県豊岡市の皆さんとのオンライン交流
「コメどころ」と聞くと東北を思い浮かべると思います。
しかし実は、主食であるお米は日本各地にて栽培されており、素晴らしい取り組みをされている産地は東北以外にもあります。今回はそういった産地のことを知っていただきたく、その一つ、兵庫県北部に位置する豊岡市のお米産地との交流を行いました。
コウノトリ文化館に生産者、行政職員、JA職員が集っての地域一丸となっての中継
稲刈りもひと段落した11月7日、兵庫県豊岡市の皆さんに「コウノトリ文化館」にお集まりいただき、オンラインにてつないでの交流を行いました。
コウノトリ文化館にお集まりいただいた皆様
左から順に
JAたじま営農生産部米穀課課長塩見さん
コウノトリ育む生産部会部会長村田さん
JAたじま営農生産部米穀課係長住吉さん
コウノトリ文化館館長高橋さん
豊岡市コウノトリ共生部農林水産課環境農業推進係係長山本さん
これまでの「おうちで産地交流」には、生産者やJAの方々などにご出演いただいての開催でしたが、今回は生産者やJAの方々に加え、行政の方やコウノトリ文化館の方にもご協力・ご出演いただいての開催となりました。
その理由は、「行政・農協・市民が一丸となって取り組む、地域の力」で成し得た偉業があったためです。
その「偉業」とは・・・。
近代化によって失われたかけがえのないもの
その昔、コウノトリは日本各地にてその姿を見ることができたようです。
しかしながら近代化が進むにつれ、コウノトリは住処を奪われていき、明治中期頃にはここ豊岡でしか見られなくなってしまいました。
「豊岡の肥沃な田んぼにはたくさんの生きものがいて、肉食のコウノトリにとってのまたとない“食卓”となっていた」とのことです。
近代化の波は農業においてもすすんでいきました。機械の導入が進み、生産性を重視した近代型農業が普及していくこととなります。
やがて、狭い農地で収穫量を増やすために、日本各地にて効き目の早い化学肥料や害虫駆除に効果のある毒性の強い農薬が多く使用され、効率と経済性を重視した農業へと移り変わっていきました。
ここ豊岡も例外ではありませんでした。
これら近代化は、結果として豊かな生活をもたらすこととなりましたが、一方で失ったものも少なくありません。
ここ豊岡の田んぼからは、肉食のコウノトリにとっての餌だったたくさんの生きものが姿を消すこととなり、“食卓”を失うこととなったコウノトリも姿を消していくこととなります。
そして1971年(昭和46年)、日本最後となる最後の一羽が姿を消してしまうこととなりました。
人とコウノトリが共に暮らせる環境を
「コウノトリがいる風景を再び」
「人とコウノトリが共に暮らせる環境を」。
日本最後の1羽が生息していた豊岡では、保護から人工繁殖、再び野生へと帰すことを目指す、世界で初めての試みとなる「コウノトリ野生復帰プロジェクト」に挑戦しました。
化学肥料や害虫駆除に効果のある毒性の強い農薬などの使用を極力減らすことによって、田んぼには再びたくさんの生きものが帰ってきたのです。
2005年(平成17年)、コウノトリ5羽を放鳥。“食卓”が豊かになったことで、コウノトリはその姿を再び、豊岡の人々の前に現すこととなり、順調に野外個体数は増え続けていきました。今日においては、野生復帰が200羽ほどになるまでに至りました。
豊かな自然と見どころたっぷりのコウノトリ文化館
塩見さんの説明に次いで、今度はコウノトリ文化館館長の高橋さん、豊岡市コウノトリ共生部農林水産課環境農業推進係係長の山本さんによるコウノトリやその餌となる生きものに関してご説明いただきました。
コウノトリ文化館では屋外放鳥されているコウノトリが数羽います。この日もコウノトリを見ることができました。ただ、残念ながら距離があったことから、肉眼では小さくしか見ることができませんでした。
コウノトリは夫婦で生涯を共にし、別れることはないと聞きました。この2羽も夫婦でしょうかね。
そこで、ご用意いただいた望遠鏡越しにカメラを向けると・・・
はっきりとその姿を見ることができました。優雅な姿ですね。
こちらのコウノトリはすぐ間近で拝見することができました・・・。
こちらコウノトリ文化館では、記念撮影用としてコウノトリの着ぐるみを貸し出してくださっているようです。
ちょうど、住吉さんが立っている場所が、コウノトリの巣に見立てた記念撮影用のスポットとのことです。
※現在は新型コロナウイルス感染予防として、貸し出しは見合わせているとのことです。
さて、気を取り直して続けましょう。
次いで山本さんより、ビオトープの前にて多様な生きもののご説明をいただきました。
コウノトリは肉食とのことで、魚や虫、カエルに蛇まで食べてしまうという大食漢とのことです。
施設内のビオトープにいた生きものを網ですくい取ってみると、このような生きものを観察することができました。
みんなでクイズ大会
一通りのご説明をお聞かせいただいた後は、皆さんでクイズ大会。お米のこと、コウノトリのこと、生きもののことを、クイズを通して学びを深めていきました。
みんなで握ろう新米でおにぎり
新米でおにぎりを握ってみんなで一緒に食べよう、という内容の当企画。
現地の方々によるご説明の後、美味しい握り方講座のお時間です。
今回、美味しいおにぎりの握り方のアドバイスをしてくださったのは、JAたじまの住吉さんです。
手を三角形にして、やさしく形を整える程度にして~。
握り過ぎないように気を付けて~。
住吉さんの握り方のアドバイスどおりに皆さん一緒におにぎりにぎにぎ・・・。
司会者も一緒におにぎりにぎにぎ・・・。
収穫を祝ってみんなで「いただきます!」
さて、再度気を取り直して、いよいよ皆さんお待ちかね、新米試食タイムです。コウノトリ育む生産部会部会長の村田さんの「いただきます!」の合図でオンライン越しに一緒に食べました。
生産者にとっては一年の米づくりの苦労が報われる瞬間であり、消費者にとっては美味しいお米をいただくことができるありがたさを感じる瞬間ですね。
参加者からは「美味しい!」「ふわふわしている!」などの声があがりました。皆さん、いい顔をしていらっしゃいます。美味しい食事に顔がほころびますね。豊岡の皆さま、美味しいお米をありがとうございます。
どんな具材を入れているの?
いよいよ皆さんお待ちかねの新米試食タイムです。
さて、おにぎりと言えば、その具材として梅干し、鮭、たらこ・・・。いろいろとありますが、コメどころ、豊岡の皆さんはどのような具材を入れていらっしゃるのでしょうか。気になるところですね。
画面越しに紹介される具材の数々に皆さん驚きの表情。
なんという豪華さでしょう。日本海ならではの海の幸あり、まさに食の宝庫。
消費が増えれば生産も増える
化学肥料や農薬の削減・不使用は、簡単なことではありません。手間暇をかけてつくったお米も、食べてくれる人が少なければ、その生産を維持し続けていくことはできません。
「消費が増えれば生産も増える」
変える原動力となったのは、地元の小中学生たちでした。
「給食に『コウノトリ育むお米』を使ってください。」
2007年(平成19年)、小中学生たちが当時の市長へ直談判をしたのです。
そしてついに2016年(平成28年)、豊岡市では学校給食に使うお米はすべて、地元の「コウノトリ育むお米」に変わったのです。まちの小中学生たちの力で、自分達の学校給食を変えたのです。
「食べる健康 食べる貢献」
身体に良い「お米」を主食に据え、食べることで生産を支え、生産を支えることで環境への貢献にもつなげていったのです。
行政・農協・市民が一丸となって取り組んできた結果でした。まさに地域の力によって成し得た”偉業”でした。
上野動物園からのラブコール
「『コウノトリ育むお米』をいただけませんか?」
ある日、こんなご連絡をいただいたとのことです。連絡は東京・上野動物園からとのこと。
「なぜ動物園から?」そう思いつつもお話を聞いてみると、
「環境に配慮した食物を餌としてパンダ(”リーリー”と”シンシン”)に与えてあげたい。」とのこと。
『コウノトリ育むお米』の米粉を東京・上野動物園にパンダの餌の原料として提供することとなりました。
環境に配慮した餌を食べた効果があったかどうか、ついに”リーリー”と”シンシン”は子どもを授かることができました。その子どもとは、他ならぬ”シャンシャン”なのです。
コウノトリが赤ちゃんパンダを運んできてくれたのかもしれませんね。
産地交流をお楽しみいただけましたでしょうか
皆さま、お楽しみいただけましたでしょうか。
新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点から、これまでのような相互の訪問を控えざるを得ない状況下にあって、交流の灯はともし続けるべく、産地と組合員の自宅とをオンラインで結ぶ「おうちで産地交流」の取り組みを行っています。
パルシステムの「産直」とは、単なる食料調達の手段には留まりません。日々の暮らしの中で、「作る」と「食べる」がともに支え合う。そのパートナーシップを育むための運動こそ、パルシステムの「産直」です。
オンラインではありますが、「結ぶ」場となる交流をこれからも続けてまいります。
パルシステム東京 商品推進本部